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Author:路傍の石
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DATE: CATEGORY:書評
 この秋というか、ここのところ昔読んだ文庫本を、書棚から引っ張り出してきては、読み返している。

 それも、じっくりと一日数頁のペースだ。

 昔、一日に数冊読んだ時のような乱読ではない。

 行間に、余韻を求める時間だけはあるようになったからである。

 川端康成さんの「雪国」を初めて読んだのは中学2年の時、その本が約50年の時を経て、今だに私の書棚にある。

 就職した時に、大部分は残してきたが、残した本は、いつの間にか、両親が処分してしまった。

そうした、持って行った数冊の生き残りの一冊である。

 この書には惹かれるのは、何といっても冒頭の文章。

 国境の長いトンネルを抜けると、そこはもう雪国であった。

 夜の底が白くなった。

 (以下略)

 小説の内容はご紹介するまでもないが、この書には、文章の一節が読者にどれほどの想像力を与えてくれるか言い尽くせない魅力がある。

 小説の冒頭は、白一面の光景だが、物語の進行に合わせた主人公の島村と駒子を中心とした人の絆のもつれが一挙に終局に向かうかのような、真っ赤な炎をあげての蚕小屋の炎上で終わるドラマの世界。

 川端さんの小説は、文字で、あらゆるイメージを描いている。

 そして、主人公の風貌、それを取り巻く自然と季節の移ろいが思い浮かぶ。

そして、さりげなく背景に配されている時代風景。

 文学に、純文学も大衆文学もないと思う。

 そして、名作は、50年の歳を経て、60歳を超えた私に、新たな感慨をもたらしてくれる。

 そんな、秋の読書。

 ささやかな贅沢か。

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